2015年03月09日

「なんで通販してくれないの?」~当日版権システムの大雑把な紹介~

僕がイベント向けに作るものはあまり商品化に恵まれず、ファン層もプラモデルやガレージキットを作る層とは被らないジャンルが多いと自覚しています。「出ないから作る」という気持ちで制作している為評価して頂くことはとても嬉しいのですが、「市販されない題材なのだから(イベントに行けないから、同人誌のように)通販をしてほしい」という要望を頂くことがあります。
僕としても心苦しいですが、版権キャラクター等を題材にした立体物をイベント以外の場所で販売することはできかねます。その理由である「当日版権(一日版権とも呼ばれる)」という制度について軽く説明したいと思います。

※当日版権制度については現状いくつかの矛盾や問題点を抱えている為これから書く項目については独自解釈が含まれているものと思ってください。
※この投稿は「模型イベントに詳しくない方へ、なぜ模型は同人誌のように通販できないのか」を少しでも理解していただき「制作者の怠惰や金儲けの一存で意地悪をしているわけではない」と理解していただくことを目的にしております。
※独自解釈を含むこともありますが、この場で知的財産権の議論等をするつもりはございません。
指摘等ございましたらtwitterID:SHR_846までご連絡ください。


◆超大雑把な制度説明

ざっくり説明すると、当日版権制度とは当日販売や展示をしたい版権キャラクターの権利を所有する会社に事前に即売会の運営を経由してキャラクター使用の申請をして、当日限り公認商品として販売・展示ができるというガレージキット即売会特有の制度です。
当然親元の審査を受けるわけですから写真の審査や商品サンプルの提出、販売価格の何パーセントかを使用料として支払うなどの義務が発生しますがこれは版元様によって異なります。
制度の性質上「(版元様に)承諾して頂く」形になるのであくまで申請だけで交渉等をすることはできず、プロアマ問わず直接交渉は禁止されていますし、版元様の都合が悪かったりキャラクターのイメージを著しく損なうと判断されると不承諾となることもあります。
極端な例を挙げると、イベント前日に急遽不承諾となるという事態も実際にありました。

「コミケ等の同人誌即売会で無許可で立体物を販売して炎上」などの時にモデラーや造形師の皆さんが一層お怒りになるのはこのようなぶっちゃけめんどくさい立体物イベント特有の制度を使っているからです。

→勝手にやるとどうなるの?
版元様からどのような社会的な制裁を受けるかは分かりませんし、もしかしたら同人誌のように黙認(後述)されるかもしれませんが、とりあえずイベントからは厳重注意もしくは出禁になります。また前述したとおり版元様優位の制度なので誰かがやらかすと今後そこに申請する別の人に皺寄せが行く為まあ恨まれるでしょう。ちなみにサンプル提出等の不備も同様のペナルティとなります。


◆どうして模型だけ?に入る前に

これを説明するにはまず同人誌の権利が「版元の黙認」で成り立っているという説明をさせていただきます。
現在二次創作系の同人誌は(条例や表現規制の問題は含めず)権利的にはグレーゾーンとされています。
版元が「気付かないふりをしている」為に成り立っているとされ、その理由として
・ファン活動として大目に見ている
・ひとつひとつ潰したり審査をする手間を考えるとそこまでするメリットがない
などがあるとされています。
最近は二次創作の設定を版元が積極的に取り入れたりすることも珍しくなくなりつつありますが、以前は同人誌が版元に訴訟される事件も実際にありました。

◆どうして模型だけ?
※この項目は独自解釈を多く含むので参考程度でお願い致します。

ご理解いただけたかと思いますが、当日版権は交渉ではないにせよ立派な「契約」です。(誓約書も出します。)「契約」と先程の「黙認」を踏まえて、同人誌と立体物について考えてみましょう。

たとえば私が絵がうまいと仮定して、A社(出版社)が権利を持つキャラクターの同人誌を作って売ってそこそこ売れたとしましょう。
A社が私が描いた本を見たとして、微笑ましいファン活動と見たか取るに足らないからスルーしたかは分かりませんが、とりあえず「まあ黙認してやろう」と判断したとします。
言い方が悪いですが、これでもうお咎め無しです。出版社と原作者様が問題視しなければ基本的にはこうなるのが普通だと思います。
次に、これがフィギュアだったとしましょう。私が(現状は置いといて)うまいモデラーだったと仮定して同じようにA社(出版社)の版権キャラクターのフィギュアを作って、同人誌の即売会で売るとしましょう。
しかし私とは別に玩具メーカーのB社が同じキャラクターのフィギュアを販売しようとA社と「契約」していました。
当然契約というと「何を何個売って取り分はどのくらい…」というお話をしますが、あなたがB社の担当だったら類似品を競合会社や余所者に作られて売られると都合が悪いですよね?他社に類似品を出させないように交渉するのも「契約」に入りますよね?
極端な話ですが、もしA社とB社が「そのキャラクターのフィギュアはB社が販売する○月○日までは一切他製品を認めない」なんて契約をしていたら、私が勝手に販売したものは当然アウトなわけです。どっちかというとA社よりB社に怒られそうな気がしませんか?
また、ガレージキット即売会の多くは、大手のフィギュアメーカーが運営していることが多く、当日版権制度の仲介をしてくれる運営会社も申請先の企業と契約して成り立っている為、参加者の身勝手が運営と版元との契約や信頼へと響いてしまうことも危惧されます。逆に何か版元側の不都合があった時に運営が当日版権申請者を可能な限り守ってくれるのも「契約」と言えるでしょう。

ぶっ飛んだ話になってしまいましたが何が言いたいかというと、
同人誌は「権利者の黙認だけでなんとかなる」が、グッズや立体物は「権利者だけではなく、グッズを取り巻く関連会社等の第三者が絡むので黙認では済まされない」と考えてみませんか?ということです。


…長くなってしまってすみません。
契約の話は大分独自解釈が多いですが少しでも「現状だとグッズと同人誌は取り巻く環境が違う」ということを理解していただけたらと思います。しつこいようですが決して作者の怠惰や意地悪で通販や書店委託をしないわけではないんです!(切実)
また、直接イベントまで足を運んでいただくことが造形師の励みになりますので、入場料は少し高いですが是非直接ご覧になっていただきたいと思っております。ワンフェスやトレフェスは面白いものがきっと見つかると思いますので模型に興味がある方は是非足を運んでいただきたいと思っております。

(以下、突っ込まれそうな部分をいくつか書いておきます)
・作品によってはファン活動への造詣が深く、イベント以外でも頒布を許可してくれる版元様もあります。
イベント以外で売っているからと言って無許可だとは断定できませんのでその点はご注意ください。
・同人誌以上フィギュア以下とされるグッズ(ストラップ、マスコット等)の無許可の頒布の是非は度々議論されているようです。ちなみに公式絵を無断で使うと当然アウトです。
・原作者が二次創作を公認している同人発祥のビッグコンテンツ等に申請が必要かも度々議論されています。
・「この制度を同人誌等にも採り入れれば良いのでは」との声も一部ではありますが、前述したとおりガレージキット即売会は大手フィギュアメーカー主催のでありその運営・企業間の信頼でこの制度が成立している為、有志が主催する同人誌即売会では(現状では)かなり難しいと思われます。(企業に相手にしてもらえるかも分からないし、仕事量も格段に増えてしまうので)
・レンタルショーケース等で「自作の二次創作物の販売の禁止」をしているのもだいたいこういった背景があると思っていただければ良いのかもしれません。
・昨年とある企業が「同人等のガイドライン」を提示して物議を醸しましたが、(言い方が良くないですが)造形界隈ではそれが当たり前だった為、特に支障はなく模型界隈では企業側を支持する人が多かったとされます。
(企業を擁護するようですが、いわゆる同人狩りではなく「○○万円以上の売上があると趣味活動として許容できる範囲を超えてしまうので、その場合はきちんと申請してほしい」という意図があったようです。ちなみにこの企業さんは立体含めた趣味活動にはかなり理解がある方だと思います。)
・先程挙げたような「特定のキャラクターは特定企業との契約の為第三者は出せない」という例ははしっかり申請していても有り得ます。
・あんまり詳しいことは言えませんが「あそこはポーズの指定があり(監修が)厳しい」「あそこは承諾はしてくれるが提出物が厳しい」など、版元様によって特色があり、ディーラー間ではそういう噂が結構あります。
・私はプロの造形師でもなければ業界人でもありません。あくまで参考程度でお願いいたします。
posted by SHR_Яyo at 04:06| Comment(0) | お知らせ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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